賃貸物件での残置物とは何を指す?

まずは、賃貸物件において「残置物」とは何かを知っておきましょう。
残置物とは
残置物「ざんちぶつ」とは、アパートやマンションなどの賃貸契約で交わすことの多い用語です。
具体的には「賃貸物件を退去する際に、部屋に残された家具や家電、荷物などのこと」を指します。
以下のようなものはどちらも残置物です。
- 自分が引越しをするときに、今まで住んでいた住居に置いていった家電製品や家財道具などの荷物
- 新居に入居した際、前の入居者が退去するときに残していった家具や家電、荷物など
前の入居者が荷物を残していった場合、大家さんに許可を得ているケースもあります。
残置物の具体例
残置物に多いものは次のようなものです。
- エアコン
- 冷蔵庫
- 洗濯機
- ガスコンロ
- 照明器具
- カーテン
- 物干し竿
- お風呂の蓋
- DIYで作った棚や壁掛けフックなど
- 自転車
エアコンや冷蔵庫、洗濯機などは取り外しや移動が簡単ではないため、引っ越しの際にそのまま置いていってしまうことがよくあります。
特にエアコンは最初から賃貸物件に設置されていることもありますが、各部屋に1台ずつないというケースも多く、自分で設置してそのまま置いていってしまうパターンが多いようです。
またガスコンロやカーテンなどは、引っ越し後の新居でサイズや仕様が合わないといった場合に、そのまま残してしまうケースがあります。
いずれにしても、取り外しや転居後の住居への運搬料がネックとなり、残置物となってしまうというわけです。
残置物と設備の違い
賃貸物件では物件ごとに設備が異なるため、何が残置物で何が設備か、わからないこともあるかもしれません。
そのようなときは、賃貸契約書を確認したり、大家さんや仲介業者などへ問い合わせたりしておきましょう。
残置物と設備では扱いが次のように異なります。
| 扱い | 設備 | 残置物 |
|---|---|---|
| 所有権 | 大家 | 残していった人(前の入居者) |
| 故障や撤去の費用の負担者 | 大家 | 借主 |
ただし、前の入居者が大家さんに残置物を置いていくことの許可を得ていた場合、所有権や費用の負担は大家に移ります。
残置物を置いていくとどうなる?

残置物を置いていくとさまざまなトラブルを引き起こします。
ここでは考えられるトラブルについて紹介します。
原状回復費用の請求
賃貸物件においての「原状回復」とは「賃貸契約終了時に借主が部屋を入居時の状態に戻す義務のこと」を指します。
ただし壁紙の日焼けや床のへこみなど、時間の経過によって自然に劣化したものは除きます。
具体的に以下のようなものは、現状回復のための修繕費用が請求されることがほとんどです。
- タバコのヤニによる壁紙の変色や臭いの付着
- 飲食物をこぼした跡を長期間放置したことによるシミやカビ
- ペットが柱や床につけた傷や臭いなど
- 残置物の撤去
このように「通常の使用」や「経年による劣化」に該当しない損傷や汚れは、借主が修復しなければなりません。
さらに、原状回復は「入居時の状態に戻すことが義務付けられている」ことから、家具や家電などの荷物も撤去してから退去する、ということになります。
そのため、もし荷物を残したまま退去した場合でも、その撤去費用や処分費用などは元の借主(所有者)へ請求されます。
大家さんとのトラブル
残置物を退去時に残していった場合、大家さんは残された荷物の撤去や処分などの対応に追われることになります。
残置物の所有権は基本的に残していった入居者にあるため、大家さんから連絡が来たり、処分費用を請求されたりすることもあるでしょう。
そのような手間がかかることから、大家さんから苦情が来ることも少なくありません。
また残置物の処分費用を大家さんが支払うことになれば、借主側は「敷金・保証金が返ってこない」ということもあります。
引っ越した新居に残置物があった場合はどうする?

引っ越した先に残置物があった場合はどのように対処すればよいのでしょうか。
ここでは残置物の扱いに関する注意点や、対処方法をお伝えします。
残置物か設備か確認する
通常、引っ越しをするときには新居に置いてあるものが「設備」なのか「残置物」かについて説明があります。
お伝えしたように、設備か残置物のどちらかによって所有権や修理費用などの扱いが異なるため、どちらでも大したことないと思わずに、きちんと確認しておくことが大切です。
残置物は勝手に処分できない
残置物、つまり前の入居者が残していったものでも、所有権は大家さんか前の入居者にあります。
そのため、現在入居している人が勝手に処分してはいけません。
残置物の所有権は以下のように定められます。
| 状況 | 所有権 |
|---|---|
| 入居者が大家さんに相談せずに、不要な家具や家電を残していた場合 | 前の入居者 |
| 前の住人が、不要な家具や家電を残していくことを大家さんに伝え、それを了承した場合 | 大家さん |
このように、状況によって残置物の所有権は異なるため、入居時に誰が所有権を持っているか確認しておきましょう。
また、処分したい際には所有者に許可を得なければなりません。
残置物を勝手に処分してしまった場合のリスク
もし、残置物を所有者(前の入居者または大家)の許可を得ずに処分してしまった場合は、次のようなリスクが考えられます。
| 状況 | 考えられるリスク |
|---|---|
| 大家さんが残置物の撤去を希望しているが前入居者と連絡が取れない | 大家さんから損害賠償請求される可能性がある |
| 前入居者が残置物を取りに来る予定だった | 前入居者から損害賠償請求される可能性がある |
残置物の所有権は新しく入居した人にはないため、勝手に処分してしまうと不法行為となってしまいます。
特に、残置物が高価な家電や家具だった場合には、損害賠償請求をされる可能性が高くなりやすいため注意が必要です。
残置物の撤去・処分費用は誰が支払う?
新居にある残置物の撤去・処分費用は誰が負担するのでしょうか。
その判断基準は、残置物を誰が所有しているかによって異なります。
| 状況 | 撤去費用 |
|---|---|
| 前の入居者に所有権がある | 前の入居者が負担 |
| 大家さんに所有権がある(前の住人と連絡が取れない場合や、亡くなってしまった場合を含む) | 大家さんが負担 |
| 残置物の所有者が大家さんで、契約前に残置物の処理を任せた場合 | 新しい入居者が負担 |
入居時の契約で、残置物の処理を新しい入居者に任せるときには、撤去や処分費用も自分で負担しなければなりません。
そのため契約時に残置物がある場合は、取り扱いや費用の負担について確認しておくことが大切です。
残置物の修理費用の負担
残置物でよくある家電は、そのまま新しい入居者が使用することも多いですが、使用中不具合が発生することもあるでしょう。
その際の修理費用については、借主(新しい入居者)が負担するケースがほとんどです。
というのも、残置物については貸主(大家さん)の提供物ではないため、何か不具合が起きたときの修理や交換費用については責任を持たないからです。
そのため、以下のような対応になります。
- 残置物が故障したときの修理・交換費用は借主(新しい入居者)が負担する
- 残置物が故障し、処分したいときは所有権のある貸主(大家さん)に許可を得る
こんな場合はどうする?残置物に関するQ&A

ここからは残置物に関する疑問についてまとめています。
Q.引っ越しの際、残置物を残したいときはどうする?
A.大家さんの許可があれば、引っ越しの際に残置物を残せます。
ただし、その場合は「次の入居者が使用可能なもの」が条件となることがほとんどです。
そのため、壊れた家電や不用品・ごみなどは残せません。
Q.残置物として残せるものは何があるか
A.大家さんの許可が得られやすい残置物の例は以下のようなものがあります。
- エアコン
- 照明器具
- 温水洗浄便座
- ガスコンロ
- カーテン
- タオル掛け
これらは「あるほうが便利」という理由で、許可がもらえる可能性があります。
Q.入居前に残置物を撤去してほしいときはどうする?
A.大家さんや仲介業者さんへ相談しましょう。
基本的に賃貸物件では、付帯している設備について内見時に設備か残置物かを教えてくれます。
もし残置物が不要だと感じたときは、入居前に撤去できるか相談してみましょう。
Q.事前連絡なしで残置物は置いていい?
A.大家さんの許可を得ていないものを退去時に残していくことはできません。
通常、部屋の明け渡しの際は立ち合いがあるため、そのときに残置物があるときは撤去を請求されることがほとんどです。
もし照明器具や温水洗浄便座、エアコンなど簡単に撤去できないようなものが残されていたときは、業者を呼んだり、後日対応したりと余計な費用や手間がかかってしまいます。
そのため、残置物として置いていきたいものがあるときは、退去の1か月~2ヶ月前には連絡し、許可を得られないものは早めに処分するか新居へ持って行きましょう。
残置物の撤去・処分の方法

ここではよくある残置物の処分方法について、品目ごとに紹介していきます。
家具の処分方法
ソファやテーブルなどの大型家具は、自治体の粗大ごみ回収で処分できます。
粗大ごみでの処分は比較的手数料が安いことや、自治体利用のため安心して処分できることがメリットです。
ただし自治体のホームページや電話から予約が必要で、手数料納付券(シール)の購入や、収集場所までの運搬が必要となります。
また、回収日は1か月に1回程度と少ないため、すぐに捨てたい人は自分でごみ処理場まで運搬したり、不用品回収業者を利用したりと、別の手段も検討しましょう。
一般的な粗大ごみの処分手順は次の通りです。
- 自治体のホームページや電話などで収集予約する
- 回収品目と手数料を確認する
- 手数料納付券(シール)を販売店で購入する
- 粗大ごみに手数料納付券を貼り、収集日の朝8時までに指定場所へ出す
粗大ごみはサイズに規定があり、一般的には30㎝角以上や一辺の長さが30㎝または50㎝以上と定められています。
それ以下のサイズのものは不燃ごみや可燃ごみなどで処分できる場合があるため、お住まいの自治体の回収ルールを確認しましょう。
リサイクル家電4品目(エアコン・テレビ・洗濯機・冷蔵庫)の処分方法
家電リサイクル法対象の家電4品目(エアコン・テレビ・洗濯機・冷蔵庫)は、自治体の粗大ごみ回収は利用できません。
これらは適切にリサイクルする必要があるため、専門業者に回収してもらう必要があります。
回収方法は次の通りです。
- 家電量販店へ依頼する
- 指定引取所へ持ち込む
- 不用品回収業者へ依頼する
家電量販店では販売している家電の引き取り義務があり、回収を依頼できます。
ただし、その際は収集運搬費用とリサイクル費用が発生します。
また、自宅まで回収しに来てもらったり、取り外しを依頼したりすればその分の費用も発生します。
例えばエアコンは取り外しに専門知識が必要なこともあり、業者を呼んでの作業となるため、その費用も負担しなければなりません。
一方、指定引取場所への持ち込みは、自分で持ち込むため収集運搬費用がかからず、リサイクル費用のみで処分できます。
ただしこの場合も、エアコンの取り外しは自分で行えないため、業者へ依頼すれば費用がかかります。
不用品回収業者では、家電4品目以外の家具や日用品なども回収可能です。
家電4品目の場合は回収費用とリサイクル費用が発生します。
多くの業者ではエアコンの取り外しや設置などもできるため、作業ごとにほかの業者に依頼する手間も省けます。
そのほか、残置物に多いものの処分方法
そのほか、残置物に多い品目について主な処分方法を以下にまとめました。
| 残置物 | 処分方法 |
|---|---|
| 自転車 | ・粗大ごみ ・自転車屋での引き取り ・不用品回収業者へ依頼 |
| タイヤ | ・カーショップでの回収 ・不用品回収業者へ依頼 |
| 温水洗浄便座 | ・粗大ごみ ・不用品回収業者へ依頼 |
| ガスコンロ | ・粗大ごみ ・家電量販店での回収 ・不用品回収業者へ依頼 |
| カーテン | ・可燃ごみ ・自治体のリサイクル回収 ・不用品回収業者へ依頼 |
| 物干し竿 | ・粗大ごみ ・不用品回収業者へ依頼 |
自治体で処分できないものは、業者へ依頼して処分しなければならないため、処分費用が高くなる傾向にあります。
事前にいくらかかるか見積もりを取っておきましょう。
残置物の処分費用を抑えるためには売却がおすすめ

残置物は大きなものや処分しにくいものが多く、処分しようとすると費用が発生するケースがほとんどです。
特に冷蔵庫や洗濯機などのリサイクル家電は、大きさによっては3,000円~5,000円程度のリサイクル費用と、3,000円程度の収集運搬料金がかかります。
さらには、エアコンの場合は取り外し工事費用がかかるケースも。
少しでも処分費用を抑えたいというときは、売却がおすすめです。
売却の際に気を付けたいポイントや注意点をお伝えします。
売却は所有権を持つ人が行う
残置物の売却は、所有権を持つ人が行わなければなりません。
所有者でない人が勝手に残置物を売却したときは、処分と同様に持ち主から損害賠償請求される可能性があります。
売却は取り外し・運搬を依頼できる「出張買取」がおすすめ
残置物の売却方法は「リサイクルショップ」や「フリマサイト」などの利用もできますが、大きな家電が残されているときは「出張買取」ができるお店の利用を検討しましょう。
出張買取に対応しているお店では、大きな家具や家電の運搬はもちろん、取り外し工事にも対応していることが多くあります。
家電の場合、製造から5年以内のものであれば売れる可能性が高いため、一度査定依頼をしてみてはいかがでしょうか。
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まとめ

今回は引っ越し時の残置物について解説してきました。
引っ越しする側も入居する側も、残置物についてのルールを知っておくことでトラブルを防げます。
特に覚えておきたい注意点は以下の通りです。
- 残置物があったときは勝手に処分してはいけない
- 残置物の所有権は状況によって異なる
- 残置物を置いていきたいときは大家さんの許可を得る
- 許可なく残置物を置いていったときは、撤去・処分費用を負担しなければならない
残置物が残っていると、大家さんや新しい入居者の迷惑や負担となることがあるため、引っ越しの際には早めに計画を立てるようにしましょう。
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